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春告鳥 第13号
『電動機付自転車(モペッド版)という名の落とし穴』

1 事案の概要

 Xさんは、足を悪くしたので電動アシスト自転車を購入することにしました。A社やR社等の大手インターネット通販サイトで「電動アシスト自転車」等と入力して検索したところ、5万円台から20万円近いものまで実に様々な種類の電動アシスト自転車が表示されました。Xさんは、その中から比較的安価な5万円台の商品を選んで購入し、後日自宅に届いた商品組み立てると、早速乗り始めました。

 Xさんの購入した「自転車」は、普通の自転車と同じようにペダルを漕いで走ることも、モーターの力とペダルを漕ぐ力の両方で走ることも、ペダルを漕がずにモーターの力だけで走ることもできるものでした。Xさんは、足が悪かったこともあり、モーターの力だけで走れるこの「自転車」に大変満足し、日常的にモーターの力だけで走るようになりました。

 ところが、ある日、Xさんは「自転車」を運転中に自動車と接触事故を起こし、その後、道路交通法違反(無免許、整備不良等)の被疑者として取調べを受けることになりました。

 Xさんは「自転車」に乗っていただけなのに、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

 

2 モペッドの法的位置付け

 近年、設例のXさんのようなケースで道路交通法違反を指摘される事案が増えていると聞きます。実は、Xさんの購入した「自転車」は、モペッドと呼ばれる原動機の付いた自転車で、法律上は「人の力を補うために原動機を用いる自転車」(いわゆる「電動アシスト付自転車」)の基準(道路交通法施行規則第1条の3)を満たさない自転車として、「原付」と同じ扱いを受けるものだったのです。

 モペッドという言葉を知らなかったXさんは、インターネットで「電動アシスト自転車」を検索し、ウェブページに表示された商品を購入しただけでしたので、まさか免許がなければ公道を走れない商品を自分が購入したなどとは夢にも思わなかったのです。

 

3 広告表示上の問題

 2020年11月の時点でも、大手インターネット通販のサイトにおいて「電動アシスト自転車」というキーワードで検索すると、「モペッド」、「電動アシスト(フル電動)」など様々な標記で商品が表示されますが、これらの商品説明を注意深く読むと「公道は走れません」という注意書きが書かれています。Xさんが商品を購入した半年以上前は、ウェブページのかなり下の方に小さい文字で注意書きが書かれているだけで、商品の箱も真っ白で何の説明書きも書かれていないものだったといいます。現在では、「この商品はモペッド版です」「公道は走れません」などと比較的大きく表示されているものの、自転車と同じように公道で乗ることが出来る「人の力を補うために原動機を用いる自転車」と一緒に表示される点については、未だに改善されていません。

 Xさんのように商品知識が乏しい消費者が誤って購入した挙句、法令違反で処罰されるような事態を招くことについては、商品を売る側の責任も重大と言わざるを得ません。

                              (弁護士 井上 将宏)

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